実話犯罪調査録『犯罪者VS探偵社』〜狙われたタクシードライバー〜

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実話犯罪調査録『犯罪者VS探偵社』〜狙われたタクシードライバー〜 - 2015.09.15(火)

疑惑のタクシードライバー

あるタクシードライバーにその疑惑が持たれたのは、ある年の四月。依頼者はさる企業で、依頼の具体的な内容は明かせませんが、簡単に言えば次のようなものでした。

ある日、会社間の取引でトラブルが発生。その時に、上層部でも機密扱いされている情報が入ったフラッシュメモリーを社員が持ちだし、急いでタクシーに乗って取引先に向かいました。

その最中、取引相手と交渉中の社員から連絡が入り『すぐに情報が欲しい』と言われたため、その場でノートパソコンにフラッシュメモリーを接続。データを閲覧可能な状態にして、口頭でその内容を伝えたといいます。

しかしその後、社員はPCからフラッシュメモリーを抜くのを忘れたままバッグにしまった時、偶然フラッシュメモリーが外れ、タクシーの中に置き忘れてしまったのです。

それに気が付いたのはタクシーから降りてから数分後。その社員は慌てて乗ったタクシー会社に連絡して車内にフラッシュメモリーが落ちていないか確認してもらいましたが、結局見つかりませんでした。

そこで疑われたのが、その時に運転していたタクシードライバーでした。

この人物がフラッシュメモリーを盗み、今でも所持しているのではないかと疑った企業側は、タクシードライバーを提訴。

じきに家宅捜索が行われる事となりますが、それまでの間にフラッシュメモリーを処分してしまわぬよう見張らせるため、探偵社に依頼を申し込んだと言うわけです。

調査開始

今回の調査の重要な点は、警察が到着するまでの間、タクシードライバーがフラッシュメモリーなどを捨てない様に見張り続ける事でした。

そのため、もしも対象者が何かを外に捨てた場合には、それを回収しなければなりません。また、リサイクルショップ等に入った場合にも売られた品物を回収しなければなりません。

また、友人や知人などに直接、もしくは間接的に(郵送物など)で送らないように、本人と接触した人物は徹底的な監視を置かなければなりませんでした。

しかも、警察が家宅捜索に入るまでの日数は少なく見積もっても1週間。この間に動員された調査員は15名以上に上りますから、依頼料も相当高額だった事でしょう。

それから一週間、この15名の調査員は交代で現場を張り込みながら、タクシードライバーの監視に努めました。

丁度その頃、対象者は窃盗の容疑で会社から自宅待機が命じられていましたが、一週間の間、対象者は殆ど家から出る事はありません。

たまに自宅から出てきても、コンビニかスーパーに歩いて向かうぐらいでしたが、その最中でも何かを地面に捨てたと思って近寄ると、ただのレシートであったり、スーパーやコンビニの店内で誰かと接触しないか、フラッシュメモリーを捨てないか等、とにかく細かい作業が多く神経を使った事を覚えています。

そしてようやく警察が到着すると、一気に家宅捜査が行われました。

自宅から段ボールに入れられたパソコン等の関係資料が押収された後、タクシードライバーも署へと連行される事になったのですが、その後、この事件は大変な誤解であった事がわかったのです。

真実

その後、タクシードライバーの運転手はフラッシュメモリーを所持しておらず、窃盗の証拠は一切見つからず、結局の所不起訴処分となったのですが、その後思わぬ所から情報の流出先が判明する事となりました。

それは情報を流出させてしまった社員が自主退社してから数カ月後、紛失したと思われたフラッシュメモリーに入っていた情報を利用したと思われる商品をライバル会社が新開発したのです。

そう、これはフラッシュメモリーを持ちだした社員が、タクシードライバーに罪をなすりつけるための偽装工作であり、自主退社も最初から計算づくだったという『産業スパイ』事件だったのです。

しかし、ライバル企業がその情報を利用した証拠も無く、自主退社した社員のその後の行方も解らないため、事件化する事はありませんでした。

結局、企業も探偵社もタクシードライバーも、この産業スパイに一杯食わされた訳ですが、人はこと犯罪となると、これほどまで大胆かつ知能的な犯行を行うものなのです。