探し出すのは人か?心か？行方不明者捜索録『数字男を探せ!』

行方不明の原因といえば？といった質問をされた時、きっと人は何か重大な出来事があったのだと考えるでしょう。

しかし、実際には本当に大きな出来事で行方不明になる人よりも、他人から見れば些細な出来事がきっかけになっている事が多いのです。

『数字男を探し出せ』

「介護施設で働いていた夫が突然居なくなってしまった」と、探偵社に依頼をしてきたのは、20代後半の女性。

数日前に警察に行方不明者の届け出を出したものの、数日が経っても行方が解らないままのため、依頼にふみきった様です。

失踪した夫も20代後半で、介護士の資格を取得後、介護施設で働きはじめました。
職場でも家庭でもトラブルは無く、金銭面も女性関係も真面目で、むしろ倹約志向の高い人物であったそうです。

しかし、失踪時の状況はかなり不可解なものでした。

その日の朝、男性はいつも通り出勤する様子でしたが、なぜか何時も言う『いってきます』の挨拶が無かったのだといいます。

この男性は相当に規則正しい人物だったようで、どんな時でも毎朝の挨拶は欠かした事はなく、不審に思った奥さんは、その後メールで何時もは送らない『今日は何時に帰るの？』と送ったのですが返信は来ませんでした。

その後、勤務先の介護施設から、男性が出勤していない事を知らされ慌てて今度は電話をしましたが、すでに電源が切られた後でした。

また、失踪した男性の行方については誰も思い当たる節がなく、捜索しようにもその範囲を狭める事が難しそうでした。

調査開始

調査はまず、この男性の自宅からスタートする事にしました。とにかく情報が少ないので、手当たり次第に探すよりも、確実だと考えたからです。

その結果、案の定失踪者の部屋のゴミ箱から、旅行用のパンフレットが見つかったほか、パソコンから行方不明者本人のものと思われるブログが発見されました。

そのブログ内容は失踪者の几帳面さをうかがわせるもので、毎日食べたものの記録と、その日一日あった出来事などが詳細に記録されていました。

しかし、そのブログの下部には、つねに『あ→○（数字）』という文字が記されており、その数はブログを始めた頃から延々とつけられていました。

数字は、ブログ開設時には「１」、そこから時折数字が足されていき、失踪前日の記事には『42』となっていました。
いったい、この謎の数字の正体は何のか気にはなったものの、まずは行方不明者の発見が先です。

そこで、手に入れた旅行パンフレットのページの折り目と、パソコンの履歴で最後に複数回閲覧された住所地から、失踪者が東北地方のある観光地に向かったと推測し、その地点に向かって、聞き込みを開始しました。

結果、無事失踪者を発見し、家族によって保護される事となりました。

謎の数字の正体

その後、失踪者が行方不明になった理由が依頼者からの連絡でわかったのですが、なんと、それは『妻の挨拶が少ない』という、たったそれだけの事でした。

前述の通り、この男性は普段より挨拶を欠かさず行っていたのですが、依頼者である奥さんのほうはというと、それに対して返事をする事が少なく、たまに返す程度であったのだとか。

また、ただでさえ神経質だったこの男性は、数年前に職場での地位が上がり、仕事のストレスが増え始めたせいで、余計に妻が挨拶を返さない事が気になり始めてしまったそうです。

そして、例のブログが開設されたのも、この男性が出世したすぐ後の事。
つまり、ブログの下に記されていた数字は、奥さんが挨拶を返した数を覚えておくためのメモだったというわけです。

まとめ

このように、人が行方不明になるきっかけを一般論に当てはめる事はできません。
それよりも重要なのは、一体何を理由に失踪に至ったのかです。

きっかけはただのきっかけでしかありません、それこそ雨が降ったとか、ささいな口論をした程度でも十分人はいなくなりますが、その理由となれば、長年のストレスの積み重ねなどが原因となる場合が多いです。

こうした事に普段から気が付ついてあげられる人がいれば、より多くの人たちが行方不明者とならずに済むのかもしれません。