探し出すのは人か？心か？行方不明者捜索録『カードを使いきる旅』

『父親が行方不明になったので探して欲しい』

この手の依頼は良くあるのですが、中でも昔から多いのが「借金」がらみの失踪。

失踪の理由としてはありきたりで身勝手な理由かもしれませんが、それでも心配になり探さなくてはとなるのが家族というものなんです。

『カードを使いきる旅』

父親が行方不明になったと依頼してきたのは、20歳になる娘と、その母親。
探し出してほしいという父親は60手前の大工でした。

失踪したのは3日前。家に届いたカード会社の請求書を発見した母親が父親につめよった所、それが原因で家を飛び出したきり返って来ないので、心配になり警察に連絡。

しかし、特異行方不明者（緊急な捜索が必要とされる行方不明者）とは認められなかったため、積極的な捜索活動が望めない事から探偵社に依頼がきました。

また、この父親を早く見つけ出さなければならない理由の一つには、父親が複数のカードを持ったまま家を出てしまった事が上げられます。

家族も、おそらくカードを限度額一杯まで使用するつもりに違いないと心配になっており、借金がかさむ前になんとしてもこの父親を連れ戻さないと、残された家族の将来がめちゃくちゃになってしまうような状況でした。

捜索開始

カードを使って豪遊するつもりであるとすれば、まず間違いなく歓楽街に行くだろうと、、まずはビラを作り、歌舞伎町周辺のホテルに聞き込みに回りました。

しかし、新宿周辺のホテルは山の数ほどあり、その全てを回っていては時間が足りません。そこで、まずは対象者の行動から、使用しそうなホテルを割り出す事にしました。

そして、大量のホテルのリストから7件にまで絞られ、そのホテルを優先して聞き込を開始しました。

その結果、4件目のホテルで、対象者と同じ容姿の人物が昨日チェックインしたという情報を得る事に成功したのです。

その後、まだチェックアウトしていない事を確認した後、本社に連絡。相談員に仲介を頼み、依頼者家族をホテルまで呼んでもらう事にしました。

そして、ついに対象者がエレベータを下りてロビーへ。
やってきた対象者を囲むようにして家族が立ちはだからり、人騒がせな行方不明事件は家族の手によって終わりを告げました。

その後

カードの借金返済に追われながらも、二度とこのような事をしないと誓った父親は、今はまじめに働いて家族に尽くしているようです。

一方、家族はカードを使いこむまでに至った父親のストレスを知り、父親を二度とそのような状態にしまいと、働く父親のサポートに徹するようになったようでした。

まとめ

行方不明者の中には、このように大変身勝手な理由で失踪し、家族を困らせてしまうような人もいます。

しかし、だからといってこのような失踪者が悪人と決まったわけでありません。

借金の問題としても、この父親が職場や家庭で受けていたストレスは相当なもので、その事を家族が理解していなかったばかりに、結局は無駄な浪費に走るしかなかったのです。

しかし、この失踪事件が解決された事によって、家族は今までよりも良い方向に傾きました。父親は自分の問題を見つめなおし、家族は父に対する考え方を変えたのです。

行方不明者が自ら失踪するとき、そこにあるのは『逃避』でしかありませんし、それは助けを求める無言のメッセージでもあります。

失踪者本人も、その家族も、大きな事件を乗り越える事で再び再生への道を歩み始める姿を見ることは、行方調査に関わる人間達にとって最大の喜びでもあるのです。