小説『探偵の探偵』は探偵業界の暗部を描く!

ドラマ家も決定し、ミステリ界で旋風を巻き起こしている『探偵の探偵』は、いまだかつてない探偵ドラマとして探偵業界関係者は内心相当注目している作品です。

なぜなら、このドラマは推理ものに出てくるようなフィクション色の強い探偵ではなく、現実に、今この日本にいるであろう探偵たちのリアルな姿を描いているのです。

特に注目すべきは、今まで探偵業界関係者が語りたがらなかった、違法調査の手法や探偵業の悪の部分でもある『悪徳探偵』達が悪役として描かれている点。

そして、そんな悪徳探偵達を叩くために作られた『対探偵課』というわれる奇妙な部署と、そこに所属する探偵への復讐を誓った一人の女探偵が織りなす物語は、ミステリやハードボイルドの枠をこえて、現役の探偵関係者達に大きな影響を与えています。

みどころ

探偵の探偵最大の見どころは、やはり探偵業界の悪の部分を存分にぶちまけてくれる所です。

特に探偵がストーカーに関わった事で業界内外で相当問題となった『逗子ストーカー殺人事件』をモデルに主人公のバックボーンが組まれていること。

また、多くの違法調査の存在や、悪徳といわれる探偵達の存在、そして、フィクションの探偵とリアルの探偵がいかに異なる存在なのかを十分に描きつつ、エンターテイメント作品としての存在感をしっかりと打ち出してくれている点などがこの作品の見どころであるといえます。

主人公は探偵が大っきらい？

他のミステリとの大きな違いは、主人公は探偵でありながら、探偵のことが死ぬほど嫌いだという点です。

普通、フィクションであれば探偵は天才的な頭脳をもち、事件を解決するヒーローとして描かれていますが、この作品での主人公は探偵の事が大嫌いな探偵というのは他の作品と明らかに異質な部分ですね。

しかし、こうした感覚を持っているのは何もこの主人公だけではありません。
現実の探偵たちも、自分の達の業界をあまり好きではない人が多いです。

正確にいえば、探偵という職業は好きだけれども、その中で足をひっぱっている悪徳探偵の存在や、違法調査をしなければならないこと、または、ストーカーかどうかも解らない相手から平気で依頼を受ける探偵社の存在など、業界の闇と言われる部分がとにかく嫌いな人で溢れかえっています。

そのため、この業界の体質そのものを変えようという動きは相当昔から出てきているのですが、一部の探偵社がライセンス制度の導入に反対したり、違法調査をしてでも利益のみを追い求める探偵社があとを絶たないため、いまだ業界の健全化はなされていません。

そこに登場したのが、悪徳探偵を狩るために存在する『対探偵課』という組織と、探偵を憎む主人公の存在を描くこの物語。

おそらく、一般の方からすれば、この物語は探偵同士が戦うバイオレンスアクションとして楽しむだけかもしれませんが。現役の探偵や、元探偵たちからすれば、これはまさに今現実で起きて居る『探偵業界の闇』と『探偵としての正義』との壮絶な葛藤に置き換えて見ることとなるでしょう。

まとめ

『探偵の探偵』はとにかく探偵でなくとも面白い作品であり、探偵業界の一端を知るには十分すぎるほどの情報が詰まっています。

ただ、冒頭部分の探偵業法に関するくだりで、ちょっと読者が離れてしまっているのはもったいないですね。法律というのは見るだけで頭が痛くなってしまう人もいますから、出来ればこの部分はもう少し解りやすく書いてもらいたかったかもしれません。

ですが、冒頭さえ我慢すれば、あとはテンポ良く物語が進んでいくので、探偵も一般の人もぜひとも読んでみることをおすすめします。